置換計画

筆名「石丸公竹斎」の短歌作品を掲載

補完計画→置換計画 2020年 改

2020年5月25日:旧友からの誘いでフェイスブック中のチャット欄で皆がフリーな気分で俳句・短歌作品を発表する場に参加。それ以来一日一首の発表を自らの課題として久しぶりの作歌を始める。

同年7月3日:チャット欄開設から1ヶ月が過ぎ、そちらでは過去の作品が物理的に埋もれて(スクロールに手間取り骨折る)しまうためスレッド管理人の作品のみをブログに掲載する。

 

1章 2020年5月25日より5月31日 七首

新型コロナウィルス緊急事態宣言が全国で解除される(5月25日)。新潟県・市はそれ以前5月14日に解除。職場のイオンモール新潟南モール棟も5月13日より時間を短縮して営業再開。呼びかけを受けてから短歌作品を久々に作り始めるが、言葉の配列に戸惑い 短歌もどきにしかならず落胆、試行錯誤続ける日々となる。

デンデンまるで動かぬ船の音のさびし、そよ溜まる空気の重さよ

待っている、こんなはげしく濃く青くゆがんだかたちで吸い込まれたなら

君んちの壁の裏から怪獣出没 、ねえ見せてよつましき陥没

大概なマンボ、噛み合わぬ辻褄、時々は舞台の脇で寝る

誕生花を取り違えぼくは嘘つきお喋りとか、しどろもどろな白昼

好色雑色炉モンジくん食いぶちは自分で稼ぐ日照る日中に

ワニ退治だよこころして来い、でも覚悟はときどき揺らしあたためてね

 

 2章 2020年6月1日より6月30日 三十三首

プロ野球6月19日に開幕、当面は無観客試合。職場は6月13日より以前の開店時間に戻り平常営業へ。6月の給料では契約時間で休業日数分の給料をいただきわりと儲かっちゃう、イオンさんありがとう。村上春樹著「猫を棄てる」刊行(短歌に引用)。誕生日を迎え満65歳に。

しょぼくれてたけど「いいね」「いいね」やだ地団太して人はきたなし

嗅覚バン!発色バン!飛べない鳥が千万と街をはさんで求愛ダンスす

人はみな悔い改めてもその程度、そうだろオマエ黙ってオレの尻をさわるな

きみは空へ声上げ散って、でも人体許可局長ウーン首かしげ却下す

象を追い象に騙され潰されかけて、大人になってく飛べぬままだが

あやしモルグ街2丁目千匹の子ザル跳び出でどの路地からも

恋人が少しはにかみ経皮経肝胆管ドレナージ、痛くないよね怖くないよね

見えづらい陥没や砂、避けがたい領域にいまあり夕餉の時を待っている

水分脂分の持続系たるわたしやあなた、意表を突いて砂地に住まう

見て!あれが禁じられたハンバーグ、聞いて!ずっと止まらぬ警笛ぐゎんぐゎん

友だちになろうよ、ぼくは丈夫さ筋トレに励むしよく森へ行く

<あるみ村長への返歌>
友よ不憫に、賃貸の森さまよえば紆余曲折のぬかりさえぎり

孤独でデリケートなわたくしが唸ったり戸を叩いたり、のっぴきならず

我が内の起伏に住まう制御棒の良し、世界の不穏に対峙出来ねど

君がためいざ繰り出さんミックスグリル、肉々しく頬張りて芳し

かたくり粉横向きのネコ、雲助の好むハチャトゥリアン突飛たじろぎ

歌がわり輝くすべを忘れ悲し、空へ帰るのかあなた許せよ

歌わかれ潤滑で魔法みたいに羽織ったり刺したりの叶わず 許せぬ

さよなら戦うお父さん!風船は空へ猫の子は捨てられず、痛恨

自分神社で祭礼うかれ、首長竜やクジラの風船たなびいている

風船を束ね悲しみ少し宙に浮く、傾くは束の間微風厭いて

<あるみ村長提出題詠>
水辺、秘密のコーヒー錆色の香に持ち重りあり翳に乗じて

きっと何も変わらぬはずの風船爆弾、君ん家を無理に歪ませ

そう、われは「そらの子」なのだ忽然と揮発気化して低空を凪ぐ

もっともっとわたしを信じて造山活動、この身このまま目覚めに怯えて

風心地よき街に噂のコロッケが、どの扉どの窓からも香のかるさよ

きみが誘った世界史講義、瓦礫には瓦礫の理由ありゆくてに花あり

傘持って電車に乗って風と走りだし、いま鉄路歪んで空に近づく

パセリ喰いたし咀嚼音あげたし!孤独な男のたてる音の憂し

夜具につましき香のあり、痛い匂いや死の匂いのこめかみに満つ

オンラインできみら慇懃に和したり愛したり、わたしは心を置いてきている

惑う、思い出の中の歌声はみな眠りの後の男女につらなる

 

3章 7月1日より7月31日 三十六首

新型コロナウィルス感染者、宣言解除後東京の「夜の街」周辺より再び増加。梅雨前線活発化で九州ほか全国で水害発生。新潟市周辺も大雨が続いた。新潟市より介護保険の算定明細書が届き、あまりの高額に驚き慌て、老後の生活に不安を覚える。角川「短歌」8月号購入、水原紫苑を知る。「雀の車」28首に衝撃を受け呼応する作品ができぬかと試作が続く。

アルパカだラクダのようだ楽をしているおまえに侮蔑のキスを贈ろう

おしなべて高きを好む、頭上には鳥の影のみ影の色はしらず

潤いて重く黒く空あり、いずれ滅ぶわれやわれらに雨降らすため

不寛容な季節でないか、ぼくら煮崩れたジャガイモさながら旅の中途で

回り道して熱帯樹を見に、ほら葉陰の魍魎たち柔らかげに揺れ

ミツバチや鳥上空で溶け合い、溶け切れぬ翼きらめく、夏正午ころ

「闇がふたつに分かれてくよ」よく気づいたね彼らねぐらに帰る道なり

ポップコーン空豆ビスケットさあもういちど…今度はわたしが試されている

深夜のジョン万次郎ひとこそ知らね巧みに辞書ひき愛語唱する

メガネしてカマキリみたいで忽然とあり、推し量るに我が試し時か

眠れぬ夜のテレビの時間あじきなく畢竟うるわしき波ハイジャックせよ

魅惑的な素麺じゃないか、いや饂飩だろ不機嫌でいる厨あつくて

よい子にはご褒美を、卑怯な子には絶望と苦いソーダと悔いを上げよう

わが魂腹を押さえて苦しみて浄土荒涼どんどん濡れ溢れおり

勢いが大切、されどあまた無駄吠えに辟易もあり雨しぶく夜など

あの橋は間違いではない、遠き雷遠き雨雲背に家路急く

岡井隆死去の報に接し>
倒れいし幾千の“昨日の友”がうたう歌、男の背より溢れこぼれて

雲を浮力で風は方程式であらわして、ぼくの生きがい測り直すよ

新しき時代に似合う新しき災禍騒然、ただ中で塩飴齧る

なお濃きを求めまた塗り重ねてただおり、くろずみにしか見えず

童子夜を見据える、くらやみのなんという濃さ鉄分過多に口中の酸し

なにがしか穏やかでない、そう誰も辻褄あわせ夕暮れ河をみている

我慢している飼い慣らされてるしなやかではない、されば消えゆくも良し

道に迷う夢をまた見る、荒涼の近さあやうく二度寝できずに

裏庭に兵隊蟻集め我は訓示す、ぞろぞろ行軍つらぬきとおせよ

野菜売る人買う人買い叩く人、叩きたたかうあまたの人臭し

みずすましあめふらし浴室にぬるく音響く、水わたり来しは誰ぞ

大好きなカツサンドついでにジャワティー心のふしぎ笑みて人をそしる

まず虚無を見据え…なーにお前には無理、小粒な闇でも摘み蹴ってろ

歩き過ぐ一人の影がひたすらに美し、サーモグラフは時々冴え澄む

屋上は夜ひとがいなくなる、夜の空ばかり気にするおまえ連れてゆく

逃れえぬ汝が伝える手旗信号「ツギノイタミマツ」そう、待っている

翅をもがれて蜂、行き場なく傾斜滑り落つおまえ余命ってなに?

致死量のとんかつソースで父も祖父も…なのに憎めぬおまえどこに塩分

救いなどないとはいわず「生まれすぐ死ぬ虫もあるのだ」水を撒いている

母たちが集い諍い都市が生まれた、都市は薄き翅に覆われる…母よ

4章 8月1日より31日  三十四首

北陸地方2日梅雨明け、平年より9日遅い。下旬に新潟周辺フェーン現象で猛暑観測。28日安倍総理退陣表明。自身の年金額決定。水原紫苑歌集「びあんか・うたうら【決定版】」購入、前月より「雀の車」本歌取りを試みていたのを当ブログに発表。その後「びあんか」の本歌取りに挑戦中。

人類の柔らかいほうが好き、発端は幾千世代の淡き水よりつらぬく

青銅を刻み削りて光ためおく甕とす、甕より色彩したたれば激し

季節微妙に植物が間違えている、曇る眼鏡で計りおり技師と官吏と

いつとなく風の儀式の最中なり 花摘みの人ら知らぬ間露に閉ざされ

色彩を嫌う人らが集い造られた街、期待はずれな坂道がある

庭掘れば数多の球根あるに驚く多分ここはきみたちの星、許せ

植物の季節よ、芽吹き茎伸び生殖具放つをやまず夏の庭のけわし

わたしだって島を持ってる、間近には捏造列島憤怒燃えてあり

病弱の人から種子をもらった、夕冷えの部屋より出で急ぎ去る

月の輪を持つ獣もっと謙虚に放電をせよ、牙の気配はうれし

毒イモリ毒イボガエル毒を持つ虫に守護されいまは巣ごもる

尖塔に魔性棲みつく、魔には花の色の似合わずに一夜にて蔦枯れよ

さっき見た夢に志村けんがいて、青空のまま熱もつ夜の極まりぬ

<言葉、雫となり流れ去る>神話にはなれぬ誰かに花捧げたし

孤客よまたも裏切られたか?そういって風は喜ぶ胸元たわませ

遠く逃げても母のLINEで炎上必至母も必死ぞ日没近いが

猛き虎バターに変じ、月の色する妖しバターに童心うふと夏めく

わが脳内を胞子爆ぜ飛びそのせいで痛くて笑う、花の懲罰である

「忘れ物取りに行けない、流刑地だから」花ある墓前の記憶だけある

擬態してひとり遅れて夜歩くわたし、死火山であり獣でもある

神のみぞ知る神の脳味噌挽肉ばかりの肉味噌神に捧ぐは禁忌よ

たたら吹き吹きて橙に鋼の溶け滴る瞬時咲く花の灼熱

街中の標に騙し絵あり騙されて雲中行くごと知らぬ顔多し

「きみちょっと枠からはみ出てないか」過ちの消えぬことかくも深き傷よ

紗を纏うをよろこびてあなた、生地透かしやや目を細め白日をみている

大勢の大勢の外れクジまたの名は悪意、ガム噛んであっち向いてる

わたしたちは難き道を選んだ、やや暑き風をこらえて突堤にいこう

「お魚くわえた」あの人をサンダル姿で追えばdestinyころり寝返る

長い夜、やや苛立ちて眠れずにあの頃を汚すほかなし優しくないなあ

澄みて冷たく湧き出ずる水の発止よ、誰かの古傷さいなんでいる

急げ少女よ悪い仲間みな放心のこんな夜明けに旅立つはよし

あの人の失態知りて戸惑い夕食の献立決まらず、うそ笑いする

起爆剤が見当たらず愕然と夏の午後、もう熱でみな溶けてくれたら

太刀持ちは炎鵬役者絵白浪の裸身しずかに迫り出して夏

 

5章 9月1日より30日 三十四首

菅義偉内閣発足。ジャイアンツ早々とマジック点灯、大リーグダルビッシュ最多勝。職場フードコートでは各テーブルにアクリル板設置。社員が勤務予定表を今月より作る。職場のあちこちで不協和音。髪の毛がそうとう薄くなる、格安床屋の回数券を使いきれず悔しい思い。


旅好きの風にさらされわが魂乾き軽めきもうヒマラヤまぢかよ

蝉喰い男の出没で子どもら虫捕り叶わず空蝉を持ち鬼となる

わたしはきちんと縊れたのか、視界狭くいま花しか見えぬよろこび

「かつてわたしは殺し屋だった」息つぎの間に独語し古刹あとにす

もうわたしたちは謎だらけ地平まで花咲かそうと千年倦まずに

水溜める甕に雌雄あり、水の熱奪い霧たちのぼるは手弱女

位置エネルギーひとを傷つけ咎められ「おまえ」は似ている水の孤独に

カルダモン或る夜のきみは嘘つきで「死神みえる」とのろく燻れり

逃げるならまだ船を降りてはならず、さて急流はひとを抜き去り嗤うと

虹は池よりすっく立ち昇りされど水面のひそか恥じらいおるか

植物のような人植物のように死にたし転移する木の瘤あたらし

いじわるないもうと、花火もアイスも放り捨て介護に夢中笑みており

twitterでかね配る人たぶんより強くひと汚す喜び風つよし

頭部食いやぶりエイリアン出でしを傍らの人の手握り息止め観たり

病歴を気にする上司、鳥になって誘惑をして刃立ててきみ囚えたき

王子の好きなアボカドを木の葉に盛り皆で喰らう、謀議やぶれて

雲に乗ってインド上陸、緻密だが効率悪きインド上空停滞をする

恋人もないのに…恋の唄あり敵味方あり乾かずにいるわれおり

火の赤く夕陽は茜よ血も紅し唇朱なれば腿ぞ緋けれ

誰も彼も水に流されればいい流れ冷え凍つき荒野にわれひとりよ

烏賊の目をえぐり嘴もぎ皮剥ぎてとりあえず笑む、地獄絵図に似たり

天気予報は爛漫の花よされど月光の金、とてもつめたく花を殺すと

忍者のまねして月夜を跳び駆ける爽快、転地療法だよいま外にいる

傘もささず闇夜に説法、主よとりあえずお供えいかが?呑みね喰いねえ

「絶望」温泉行きのバス彼岸は予約で埋まる、死者の律儀よ

Quo Vadis,Domine?わたしに君に限界がありピクニック日和にこやか

その丘のさらなる先にガリバーの山の連なる、花木植うべし

独身者、青年のおおあくび何もせず老いる算段路地を見ている

谺せよボーイソプラノ、不犯にて逝きし人らの声そらすべく

「恋人は偏西風に乗りやってくる」もうじきなのに眠い真昼間

ぶるぶる震えるぬいぐるみで救われたいな邪なあいつに投擲すべし

天上の人に打たれた、贅肉ふるえた、楽をして生きるべからずと

戦だもの敗けられぬよと猿蟹の急遽出揃い金具がしゃりとさす

わたしたちの洗濯機が故障し海渡れない!追われ雨宿りして<なう>

 

6章 10月1日より31日 三十八首

トランプさん新型コロナに罹患、でもすぐ寛解で怖い病気でないことを身をもって証明。菅総理学術会議推薦6名を拒否。ノーベル平和賞に国連食糧計画。職場イオンでは売上昨対100%超え、コロナ自粛も収束へ。職場新人巡回女性(病歴あり)に故無く嫌悪される、怖さと困惑で上司に作業時間の変更を願い出る(11月から変更に)。またフードコート新人20歳中国人女性がナルコレプシーの持病持ち。いろいろ精神世界の不可思議を思う。

妻なきまま死んでられないコロナで…と小声走ったぼくの球根

苦しみの純化。ぼくらもう年長組だし日々の嘆きのまこと小市民

未来が少し見えちゃう病気の子がかわいそう、弟がいつも睨む

母さんの誕生日に贈ろう「ぼくは自分を汚して生きる」除湿機を

PIZZCATO弾みはじめる保温タイム、ときどき黒焦げ朝にかなしむ

吹けよ風、火災保険の特約を控えめに小さく歌う人なぎ倒される

父は元特攻隊員で五体全う復員し警官拝命、墓の裏から蜥蜴よく出る

風の音と聞き間違えちゃうきみの声、もうくれないも闇かもしれない

蕎麦屋ではドラゴンの肉、鮨屋にはウミガメの肉、淑女堪能す

明日になれば怪物となるぼくの心臓、引く手あまたなわりに不出来で

まもなく湾岸地下駅に電車が入線します、バスタブ型の車両なお良し

水棲の人橋桁を高い場所から叩きだす、悪い遊びを覚えたらしい

猫に小判童女には業平さまでも荷が重く開き直りて輪投げしてみる

GoTo業平、むかしの春に帰りたくレトロな電車でカモメみにゆく

メアリーきみの仔羊が葡萄畑で途方に暮れてる、なみなみと涙ため

走れくますけ!母がひとりで待っている家への階段互い違いに

わがままなあの人を何度も叩いて水に落とした、白濁しぶきて

穏やかなだけでは駄目、汚れてもいい服を着て宙にあそべる

夜の国に転げ落ちきていざ国境は黒光る河、渡るよりなし

放課後はきみとの時間、じゃんけんをし鬼を決めよう滅び待つ順を

渦から出来たわたしたちだけど起きて抱き合い、もう渦に戻らず

珍獣といっしょ夜の山歩きたし、闇でこそおまえをすんなり愛せる

軍艦が沈んでる海、素潜りで危なげなけれど“無念・苦しい”が耳鳴る

<花に嵐>の譬えあり お前の放つ擲弾筒が詩歌ゆさぶり花はなきがら

ハニカミ文法モジモジ会話術、届かぬかわたしの歌がと面伏せて問う

「デートにいこう星を見に」山上はきっと楽しい垂訓もあるきみはさいわい

ひ弱な子なのにボッチャの達人、戦いのあとぐったりは父母なのだけど

石投げて塔を倒し塔なき街と名付けた、少ない画材で街が描ける

あたたかい国に死者甦る、死者たち昼は諍い夜に相和し詩を奏でおり

花を摘めば商売になる遊びに行ける、遊んでばかりのクマよ手伝え

小さな嘘がばれちゃいまして手立てなく海見にゆくか青はたっとし

もし踏切が締まっていてもおまえのために走りたい、遊歩道でこぐま真顔に

人類の半数はIQふた桁、みなただの野次馬みたい顔が闇に消える

困った、緑が病気だあらぬこと言いいびつに屈み…嫗の病よ

ひとりの夜は繭にこもり昨日みかえし…そうかやはり廃坑ここは

青葉台若葉荘、階段わきに緑の洗濯機あり全部の大人が洗われる

夢の中で踊り疲れて、なのに夢の中ひとりのわたし踊り止まらぬ

わたし宛に歌が届いた、叱責の強き口調で「踊れ!恋せよ!」と

 

7章 11月1日より30日 三十四首

トランプさん大統領選落選。世界中でコロナ第三派猛威、欧州で都市封鎖など。国内でも感染者数増加、新潟県でも警察署や小学校でクラスター発生。ワクチンの開発が大詰め段階のようだがどうなることか。職場の同世代責任者男性、肺癌が見つかり急な退職。自治会活動で近隣の歩道緑地帯の整備を発議、ボランティア募集し草刈りなど始める。月半ばで日々の歌作の陳腐化に気付き試行錯誤しはじめる「記憶失っていい…」以降言葉使いに変化→でもあっという間に元に戻った。

かあさんへ蚕が元気だ、虫愛ずるあなた溜息つつましく市況気になる

コーヒーが切れ夜を歩き満月を見る、月光に肌澄み夜着のかるさよ

紅茶オーダーしましたわたし意地悪な姫です、誰彼となく議論吹っ掛け

全て鳥の名を失念、でもわたしこそ鳥よたじろがず天空奥底の青知る

迷い猫預かっています、運命を溌剌ゆさぶる真直ぐなけものを

ひとりで出来るもん死の準備!誰も気づかぬ道みつけ少し抗う

わが心のありどころとても柔らか開かれてみなを好いて、きっと短命

スカンク世界はこんなに臭くて疎まし、トランプそうだおまえも

傍らに人いたはずいやいま透けきえた、呼び名を知らぬ魂だったか

鮎の塩焼き、世界はずるく出来ていて急流逃れまた美酒を飲む

「人が勝手に死んでゆく」ぼくの日常ほどよき緊張かたわらに滝あり

記憶失っていい、喋れなくていい、呼び名知らぬ島が霧に隠れた

脱衣するあなたうれしくてあおむけになりたい脱衣したまま

<もう少し待つ、目を瞑っていればいい>忘れかけていた音ききたくて

95歳になったなら捨ててくれないかこの身を、強風で景色が変る

口笛吹いてうれしくはない自転車療法、ひとを容れずにいまだ

話し方は見よう見まね知らぬ誰かに調子合わせ、チャーリー悲しむ

恥ずべきはおまえ爺さん、追い抜かれ逃げ遅れでも種子蒔くべきか

もっともっと楽になりたい夢のようなわたしの時間に押し戻されたい

ヤバい人いづこにも出没、ヤバい人らと通じ合えぬかひとりめし食う

同じわたくしだけどいくつもの命が溶け砕けそのたびの修羅を遊ぶの

わたしといて楽しいだろうか?川を見て文字盤を見て人の息吹よ

嫌われて追い払われる夢を見て…遍路さなかにぼく空威張りする

どうにも解けぬ問いあり黄金・不死・父母…椋鳥の大家族が鳴く

曲がるんだまがれ人生曲がれ、おまえさん深刻だよと言わせぬ曲折

孤独特盛り溢れかけ死の淵迫るよ、ズボン下ずり落ち荒涼である

おでん売るならおでんの心もぎ取りてお前に供し、お前の心は許さず

コンバイン有能、みどりどんどん加速してぼくの文化が野辺に蔓延る

嘘つきの子が路地に隠れた、電光で照らし懲らしめ日和うるわし

つまらない都市、金属がすぐ腐食する赤錆び色の出来損ないな花たち

船で文化が運ばれました、異邦の香に恍惚のきみ海揺れておる

卑下するなかれブドウ球菌、腹をさすられ嬉しかったり腹立ちだったり

同調圧力いうほどのことでない、交尾の順待ち並ぶぼくらのよろこび

次の波を見張り続けてこれからも、さなくばひとり仔猫の自慢す

 

8章 12月1日より31日 三十五首

英米ではコロナワクチン接種開始、でも英国では新種コロナウィルス感染力が強く疫病との戦いはまだ続く。日本でも第三派襲来で医師会が「医療崩壊寸前」を叫び「勝負の三週間」を呼びかける。海幕長が送別会で元IT担当大臣がパーティでコロナ罹患、あっけなく罹るよう。NP作業者のシフト表作成をいろいろ疲れて放棄、他のNP作業関連からも手を引く。自治会ボランティア緑地帯修復作業始まり、整地した一角にパンジーを植え意気軒昂。水原紫苑歌集「えぴすとれー」購入。「肛門が天文學をまなびけるアリストファネスの知らざりし菊」などぶっ飛んだ作品多くとても嬉しい。

テーブルマナーが気になりすぎてあの人を殺したく候、爪を見ている

アルバムを捨てられず母の逡巡、でもぼくいい子でいるよ慾薄くして

ぼくの黄揚羽黄金虫だれかが盗った真冬に気付いた、少年期凍てつく

匂いが違う人に出会った、花や皮膚が死ぬ匂いさす会議の前に

蛹だった、真太くはない木に沿える少年消えてく人に知られず

田舎カクタス瓜二つでも違ってみせて、ねえ魔術師って本当にいるの?

シュルシュルお金が溶けてく眼の前で、それみたことかめでたき音である

山頭火が処刑されたよ、咎めたせいであいつを」山茶花も散り

みどり、金属と和み包み軋み増殖している慎み知らずみどりは

貴種流離、新型コロナで誰も彼も詰らなく生きあるいは色めく

王蟲腐海→集団感染ぼくら変人ぶってる恋の魔術師ルネッサンス爛熟す

ジョンレノンという名のネコ、我を忘れ皿を舐めてる呵責なく生きねば

健康体なり酒毒遠ざけ血中の勇士笑顔で…助けて!希望がどこにもないの

お婆さん川で洗濯、気が変になりそうさかしまを生きるしかない多難に

この道をたましいも通う、変人ぶりて永劫回帰を問うや初雪

もっと容赦なく懲らしてくれないかわたしを!冬の風はしたたか

オオカマキリに教えてあげたい、汝が母どもも満月に反り威嚇していた

シクラメンの赤が濃すぎてホームセンター園芸コーナー逡巡している

君とはもう逢えないのだろう、傷つきて水辺にちかく苔のまみどり

恋人同士のケンタウルス「ぶっ壊す主体的に」と振られたばかりのケンタウルス

騎馬戦の騎馬すってんころり大将の恥辱だくだくシャツの土色

海を見ずに死ぬのか君は?嫌です主任!水は静かに縊れて溜まる

とりあえず引き返そうよ棟梁のせいじゃないんだ、雲に届かぬのは

遊び通せというたかジョン・レノン?苦い薬を服めば勝手に進む船

前世は恐竜だったよ、一億年鉱物でしたいまはヤドリギ恋は拒まぬ

cock-a-doodle-doo、子らのこともう忘れ棲み心地ばかり気にする健気よ

母と暢気に歌仙巻いてる、でも時に母の獰猛リミット越えて花を散らかす

ごらんわたしのあそこは完璧でない、奥底きれ込みありし桜の色の

母さんぼくはこうして死んだ、ビル街のパン屋で買い物してる間の雹

おでんのブルース聞きながら寒気予測す、元日のガスステーション休業だったか

ひとりでに閉る扉ガタピシ証言台へ、わたしは過去を愛せるだろうか

娼婦うきうき「この名は風から奪った」続き知りたく冬の花屋へ

約束の場所で噴出汚泥温泉これじゃきみに逢えない、蝉の一生

デカルトに告白されたの」姫の逡巡この街はどこへ行っても石鹸臭くて

木登り公園木登りをする猿たちが雪の望郷、眠たくなったら敗け