置換計画

筆名「石丸公竹斎」の短歌作品を掲載

補完計画→置換計画 2021年前期

 1章 1月1日より1月31日 三十六首

7日再び首都圏に緊急事態宣言発令、その後関西・東海その他でも発出。感染者数も最高一日8千人と激増。職場イオン新潟南店のテナントで22日コロナ陽性者確認、ほとんど大事とならず、知らぬ間コロナ当たり前か。昨年末から新潟県大雪、正月も成人式も豪雪、職場まで数日バス通勤。寒波のせいもあり89歳母の体調不良、直腸脱となり数日苦しみ通院。職場の責任者が初期の喉頭ガンと診断され2月上旬に入院手術、昨年に続き喫煙者淘汰の時代か、入院期間だけ責任者代務できぬか打診されるが、母の介護を理由に固辞。

二日酔い看護婦犬つれて朝の散歩す溢れたら負け、凍てつく坂道

たまに来る忍者、かくれんぼの間に隠居暮しよ史学まなばねば

難解な歳時記、毒虫毒薬独裁者の項あり死者のかず数多

春天体観測ショー大気かげろい月夜の落し物やはりみえない

あらここに杓子定規な神さまがいる、神よ歌うならやさしく遠くへ

政府転覆三波伸介謀議満点パパは減点、太陽は孤独だ

<犬のお巡りさん>助けてあげる寒さには枯草ベッドで温し仔猫よ

Danger ahead!前方で気違いお茶会、童話より獰猛なウサギと帽子屋

くちづけせよとはやしたてられ蜘蛛女、誰も見てぬのにサンバ悔しい

初期化して最適化して小鉢に盛りてわたしがいただく、たんと眠るぞ

燃えよブータン龍旗なびかせ走り燃え、ブータン跡形もなきを恋う

「関係ない」のボタンを押してエキストラ退出させた、我欲まぎれない

友よ励ましのメッセージあり「騙し討つなら凪ぎて鎮める日の佳し」

不平等条約、大きなおまえと小さなわたしが交換されてる種苗店にて

しいたけの言い分「もっと僕らに恋の時間を、さなくば板前の刃朽ちなむ」

母さんへ、役立たずの僕だけが取り残されるって罠でなく風流ですよね

絶望の国ミカンの王様、その人は長い名を持っている「物憂い…」

娘さんよく聞けよこの先で稜線分岐す、物語つらぬきて往け

スワヒリ語で『失せろ!』の意味です場違いな語学教師のいつも笑顔で

あの人が拒んだせいで船だけが取り残された凍てつく砂州

星見渡して思い出す総括そして粛清、物語隠せはせずに少し居直る

シンデレラかぼちゃのバスは午後9時最終、未送信メールを恥入り

「ビクターの犬」の中古あげます、チイちゃんガンベルト落書あるけど

深き傷を柔き炎で焼き鎮めきみは健康ほお白きままだが

不慮の死アニサキス一人きりで待つこと、汚れてみえる路地の草むら

わたくしの樹木の部分がやらかしまして土中へ沈む、腐れよ!どんどん

タンホイザーみたいなソーメン荘厳で硬すぎて評価など拒んでいる

「正しく生きる」おまえに贈ろう世の果て周遊券、パンクたぎるべし

金属探知機またのやらかし鉱脈すぎて薔薇園あたりでみだれけり

「待って!歌ってくれぬ人がいる」あの夜に踏み入れずいま息を止む

お父さん滑った羽目を外した、渾身で朗々としていまなにもなく

泣きながらあなた探してあきらめて冬の空見た、日直だったのに

とんでもなお願い水兵さん僕を煽って!風強き日倒る寸前とろり不覚す

セイウチくんお見事!冷たく白き領域で夜気に微笑む客はみえねど

翼よあれがバヌアツ…って嬉しくはない、ランプの精よもひとつ明るく

 

2章 2月1日より28日 三十一首

新型コロナワクチン接種始まる。コロナ 緊急事態宣言、栃木県のみ早々に解除。首都圏以外は月末に解除。五輪森会長の舌禍問題で“ジェンダー・たしなみ”論など盛ん。菅首相の長男の総務省幹部接待関連、長男のボサボサ長髪に吃驚。職場には33歳新人男性責任者候補が入社、今後に期待。フードコートは全面対面アクリル板設置で汚れをみつけるごとに拭かねばならず仕事量倍増、筋肉痛3倍増。母の容態芳しく以前の生活に戻る。ただしいつ再発するか不明ではある。25日発売KADOKAWA短歌3月号に水原紫苑28首載りさっそく購読、また本歌取りさせていただく。

みて!あの猫の当てが外れてホームレス、恵方道ちら眠りに入る

冬の月が赤い唐突に死を願うほど!叶わぬを知りて歩きだす

ふりふりぴくと仔猫の尻尾が俊敏で不規則動詞を監視している

不登校の子を連れ電車に乗って空と交わる旅へ、反射板を手に

ヘップバーンと一緒に狩りをする、銃弾薬は持ち切れぬほど全て紫

超どでかいがこれはポーズだ、効果音付き風船の下ひとり耐えおる

メンチカツパーティ自分の力を試されて結果10分こころの弱さよ

開墾のよろこび人ら生きやすいほど死に近し、みて収穫これほど

蝸牛の目玉なにみる後方で不可思議督戦隊の空威張りみてる

病歴はないと朗らかCOCOAさん、本当のこと言わぬ聞かぬ照れもせず

ドードー鳥にご褒美もらう約束してた、ドードーもう滅びたけれど

一人ぼっちが千人もいて千人がお前を睨む、孤独を知って

清潔が取り柄良き肌の香でも旧正月に蛇食う予定はいわず

原子番号三桁のオレが瞬時あらぬこと口走り瞬時で果てたり

夢の中で若返ってた若きまま死ねばよかった、夢に影は映らず

僕は大工、忘年会で女体盛りなんと外人やんけ目を瞑りたままか

許してはならず無神経なヤモリなど、案の定お父さんが恋に躓く

嘘の多い人生です帰り道ご一緒でしたね「攻略は楽しく」

「全身湯たんぽの刑に処す」相方に愛想つかされ汗まみれ果つ

いつとはしらず働き倦んでた、ワラジムシだって遅速あるよう日短し

桃太郎さん殺っちまったぜ!あの街で淘汰てこずり焔色なり獣ら

誰もみなわたしの味方、棍棒や斧で守られわたし日々を装う

全体とまれ濃い髭の人がみなを値踏みす、働きバチの数多売れ残り

「さよならを言うのは少しだけ死ぬこと」だけど誰も来ぬ日のわずか放心

「君が間違っている」追われた鳥の軌跡だ繊き光にみえるのは

みどりごエスは給食当番、緑色野菜たんとおあがり胡瓜に似てる

雲垂れて気圧低くて叩きたくなる…子や老人たちみな走りて逃げよ

すべての人がわたしを嫌い道を塞いだ、トマト買いたいだけなのに

妥協の産物、ウドンの国では父と母とウドンを踏みて国生みとなす

運動モーメント力の配分遺伝子工学、ほどかれたわたし庭を見ている

方向音痴であなた宛ての手紙まだ持つ、山茶花の木がめじるしなのに

 

3章 3月1日より31日 三十六首

21日で緊急事態宣言終了、だけど全国でコロナ感染者増えつつある。新潟県も連日陽性者2桁。母とわたし宛にワクチン接種券届く。職場で20歳中国人発達障害従業員が失踪行方不明、だから言わんこっちゃない。市道緑地帯整備作業、ボランティアのおばさんと少しづつ進めている。自宅の壁が劣化し傷んだため貼り替え・塗り替え作業実施中。足場を組んで家じゅうが暗い。講談社現代新書水原紫苑著「百人一首うたものがたり」購入、短歌作品同様のぶっ飛んだ解釈解説を期待。

おでん国の原住民より「ミスおでん」審査用紙が届く、食欲で選ばねば

「長生きはしたくないんだ」孤独な象に小声で呼ばれカロリー減ずる

詩人の魂ネコの名に歓喜とむりやり、でもおはようで繋がっている

「あの星に死んだ子の名を付けよう」どいてくれないか星雲も銀河も

 這いつくばってコロナ退治す這いつくばれば妖精も見える態度悪そう

生きにくい世の中だから寄せ鍋セット、寒さ味方だ敗けも嬉しく

根掘り葉掘りの調査員きき終えて「一人きりでは船を出せない」そうか

僕らからあの人は見えず、愚痴おおく言うらしあのひと病渦のせいで

疲れきってる子供らにカレー丼、勇気もあげる地母神の白い衣装で

赤い包みの薬が届いたジャンケンをしよう、どちらか黙ればそれでよい

難問のたいがいは不随意筋肉の気儘のせい女も男も“まあ落ち着け”と

無誤謬山地に部隊到着まちがえて咲く花を刈る、血の騒ぐこと

趣味というほどではないが断食を少々、成仏には赤き血がまだ多いと

勉強になります神仏習合あれこれも和歌の神様、断じて人は

きさまとおれとは同房の羽虫それも歳いってる、離れて眠ろう

齧り虫脱皮し増々獰猛噛みつき昆虫へ見て!ポルシェの光沢を

母さん行ったり来たり歩き疲れ、欲望なあに?取ってあげるよ母さん 

[Is Paris Burning]長い休暇を終えて<あはれ>影になり踊るのだわたし

明日に向かい陽気にBANして留め金外す、方角違いなるもよし

「腫瘍でござる」違うんだこれはホルモン、粗探しする指のうとまし

いくさの真実、牡蠣殻に埋まる兵舎で嬌声やつら気儘で可憐なり

青ヶ島に行きたくないか同性婚、島のどこでもペンキ塗りたて

「簡単なお仕事」ですと言いくるめられ着ぐるみ星人地球ほろぼす

ずらかれ父ちゃん!ぼくら黙って補助の申請、取り返しがつくうちに

一本の消火器めぐり夜中まで言いあらそった神さまと、詩人敗けてない

嘘ついて荒野へ走る嘘つきが荒野に集う、知らぬことだらけの荒野で

子供銀行頭取日報「ギャングを吊るせ!生徒会長割りと大好き」

収入のあまりない人が子犬連れ夜道を歩く、我慢強いかきみの親友

他人の孤独が嬉しいか?「残酷な手羽先のテーゼ」ボンジリ好きな父だった

歯並びのよい大きな女が空を飛びたい、福島がそんな夢をみてた

ごきげんよう乙姫様、狭いねえ竜宮城からだのことで嘘は付けない

「ひどいんだ奴らは!性的逸脱でないと言い張る」にらめっこ続く

なんでもない運転手なにもない道に名を捨て走り去る、皆も去るべし

だれだっけきみのこと黙っていようと言ったのは、いま幾十度目の宣誓

おしゃべり戦線きみら喉を自由に鳴らせる人が楽しそう、声かすれ

アドニスアポロンその他神話のみなみな声量かんばし、愛し肺活量よ

 

4章 4月1日より4月30日 三十二首

東京都および近畿府県に3度目の緊急事態宣言。それ以前に蔓延防止重点阻止(略称マンボウ!)がコロナ蔓延地域に発出。新潟県でもコロナ陽性者が増え、大型連休は今年も人出の抑制。インドでは一日に25万人が感染という。職場フードコートは22歳新人さん入社、定着してほしい。17日雨中に市道緑地帯に花の苗を植える、回覧板で告知したけどご近所の誰も来ない。草取りのせいで左右の膝が痛みだし老後に不安。

トロちゃんトートロジーおまえ犬だろ縄張りの唐揚げ店主畏れ入らせよ

貧民大会堂にて貧民大集合おこるを周回遅れの子グマと見ている

スシローへ行け集え!存分に寿司食い茶を飲み間違い続けよ楽しく

全身バターのやわらか子ちゃんひとり歌会へ、いい子でいてくれ

冷凍保存の斎藤さん暗い庫内で我慢し歌詠む、色彩がない

上品な人が自転車で会釈し走り去る、夜暗く病禍は近い

ビンテージ観音ご利益は「うっかり死ねること」携帯でお迎え嬉し

違うんだこの人は神さまじゃない、ぼくはどんぐりこの人と二人耕す

開明的な爺さんメール早打ち、婦人部の皆に伝える訃報に絵文字よ

はてなの国の餃子定食、ハテナ?巴里でもうすたれた喩が練られてる

近未来、中学生のぼくが還暦くたくたで母よまだ好いててくれます?

遊女ちはやぶり横綱は軽い鬱らし、歌は埒外ダメージちりぢり

このドアはシベリアに続いていますキリギリス、修繕もせず寒波楽しむ

世界一早く疲れるわたしと一緒だよ仔犬たち、戦いに行こう

桃太郎さん未来は?ぶんどり物でビジネスチャンス?声を出せ敗けても

モヤモヤあなたのために死ねないが代わりにロケット半球飛ばす

見て!キモいお巡りさんが懲らしめている、オイディプスマルキ・ド・サド

おまえ死んでいるなら甕に浸せとピタゴラスがいう、重さ気になるらし

肉喰えば1.5馬力、怖い場所も平気で闊歩おやもう朝だ…自爆すまじき

すばしこい虫たちとそういうの苦手な人たちとわたしとの旅続く

普段着で戦争いつでも恋愛、他人の嘘には容赦なく闇へ蹴落とす

限りなく続くドーナツの時間、もぐもぐ墓参の最中も心地よし

気儘なせいで勝手にジハード、おかしいな友達が半分消えてて

もの凄くよく走る救急車で修羅場へ急ぐ、泣いている暇なんかない

太陽よ今を照らすな、わたしと友の大勢であの人覆いつくすまで

新タマネギ子さんをスライスどんぶり一杯だ宇宙飛行士よ食べたいか

情熱的なピンポンダッシュ、守備はきみ捕われたなら敬語で対せよ

敏感なゴリラ連れ船を見に行く、海を渡るよきみら檻に詰め込み

飛行船まどろみ号戦国の世を飛ぶ夢をみる、子供は乗せぬよ

たこ焼きを互いの舟にぶつけ合い大阪湾岸戦争、泥色の海だ

幽霊と二人で昼食、きみいつ見ても若いんだねといらぬこと言う

早朝に集う線香花火被害者同盟、おそろいのTシャツがダサい

いつもどおりドングリ合唱団「連れてってあの星まで」歌いつつ泣く

 

5章 5月1日より5月31日  三十三首

 緊急事態の都道府県、6月まで延長。職場でもコロナの跫音どんどん近付く。防災センターでクラスター(?)発生。設備さん警備さんの4名陽性、その他大勢が濃厚接触で自宅待機。母は26日に一回目のワクチン接種。3月に行方不明と記したフードコート遅番勤務の20歳発達障害ナルコレプシー中国人女性が遺体で発見される。それ以降の情報がない(会社的には事故で片付けたい)けれど、同僚で彼女の遅刻や仕事の齟齬を大いに叱り責めたわたしはとても心が重い。20日に緑地帯春の緑化作業が完了、草取りと水やりで今後も大変。

石器時代の誰かが気付く「言葉で恋が実れば」いや果物の勝ち

健康ランドに出没時間泥棒、サウナでうたた寝めざめてジュラ紀

分けあおう甘くないソーダと無骨な身体を、高い壁を登るため

倒され流され怪我をして虹の橋を走って逃げる私の肌はこんな紫

あの人が間違えてぼくら殺人者に似た名だ、そのせいでモテない

 五月五日、同人あるみ村長の誕生日のお祝い歌

知的で融通のきく伝書鳩をあなたへ放つ「五月の風をよろこぶ」と

アインシュタイン「光速に近づくほど甘納豆の甘み増します」だから

自由が嫌?民主主義がきらい?塩分で腐食する硝子がきれいだ

「お食事中失礼します」歌いながらケチャップ増量シェフのご褒美

「パパちょっと暑すぎるんだけど」歌い終えるまで待てぬかとむくれてみました

ギロチン踏切ヤバい遮断機重すぎ、バス待つきみが笑い見ている

「ぺ」のつく病気の人を見舞った、他の誰も来ぬと「ぺ」は悔しがる

いいのか一人しかいないけど…十九歳ペンキ塗りたて諦め悪そう

夢の中のハングリー共和国、大勢の子供ら大鍋で薔薇を煮る

方向音痴で有名なお父さんカーナビに「雑魚め!屏風が逆さよ」と

赤いろうそくはわたしが買って自分で灯す、答え合わせ誰もせぬなら

タワーマンション極楽荘で謀議はてなし最上階は空気薄いが

道徳の木が切り倒されて晴れ晴れしここ眩しすぎ僕ら悔しい

お洒落な象ですが何か?ストイックな被り物のせい盗み見られる

あっ!強い心が湯気でふやけ呆然とあり、変色で気が滅入る

病名はエドモン・ダンテス、破滅気にして夜の更けるほど陽気に

あの方にワクチンをお届けせねば、微熱あるせい戸惑いばかりで

間違えて急行停車しました死神電鉄、どこかでサイレン帳尻合わせた

妹と遣唐使ゴッコしてます、のどかさも船も貸し切り老酒は時価

とりあえず反射神経、ワイルドな罠ばかりの海だカモメついてこい

傷ついたワカメちゃん途方に暮れ、でも賢明な兄は迎えに行かず

玉ねぎを使ったマジックをお見せします王女様、淘汰は手早く

怪物vs.化け物平気の女の子だぞよーいドンで罵声ぶつけあう

お爺さんは昔軍人、鬼が島で敵を討伐…格安の霊園で眠る

ぎゅうぎゅうに詰めてウミウシそれから撹拌、あの人はなぜ呼ばれたのか

昆虫秘宝館ライブの妖し…ねえお嬢、まさか明るさの単位間違えている

壊滅的なプードル戦線、累々の墓標は電柱を模し木の香かすかに

伝言ゲームで「お婆さん殺す」と耳打ち、残念さきを越される

 

6章 6月1日より6月30日 三十五首

沖縄県を除き緊急事態解除、首都圏陽性者は減らず。五輪ウガンダ選手団、ワクチン打って来日も2名感染。小池都知事心労から静養。宮内庁長官より天皇のコロナ・五輪懸念拝察と会見。母はワクチン2度接種、わたしは1度。市道緑地帯に植えたバーベナ全滅、日々草の片側緑地帯も壊滅的。初年度のこと間違いはある。自治会敬老会の総会に参加、4千円の弁当が昼食。自治会費と市からの補助で母と二人分無料で食べた。こちらのブログもスクロールが大変になってきて、7月から新スレッドにする。

 友情が詰ってるはずのガスタンク実はからっぽ、曖昧な挨拶に変え

"There's a Starman waiting in the sky"優柔不断なわたし此処で北斎を待ってる

水曜日に友達がきて木曜日に怒って帰る、覗き見しないで母よ

怖くても立ちどまり見てしまう蛇、蜘蛛、蔑みの貌するおまえ

狭いキッチン瓶が転倒、床油まみれの今宵こそ分割統治の密議を

汝知るべし「あの子お祈りが苦手です」違うサイズのうっぷんは晴れ

たとえば野菜畑ではヘレン・ケラーと似た症状の人でも他人の邪魔をする

音楽は届かぬが優しい世界に行く、扇風機も洗濯機もそれは丁寧

先回り温泉しんどいときに入るべからず、劇的なほど不機嫌になる

交雑繰り返しヤモリは派手に、わたし以外のみな総じてカラフル

大根おろして出来た傷です手首擦っただけです、面接官を笑みて諭す

僕ら近すぎみどり濃くなる、濃すぎて探せぬ小型恐竜は?「空へ」

「本能的な愛かな母さん?地球守るのは」ウルトラの父母とめどなく

願い事叶うけどすべての仔猫に嫌われるボタン押します?監督ッ!

婦人服売り場で不服従運動、夜更けサスペンス劇場みたいに怖くて

十六歳のしゃがれたブルースで尖った歌唄え、署長は不在だが

未来から来た男、血糖値とびぬけ「飽食の何が悪いか」桜餅くう

どうせ明日には喰われちゃうんでベジタブル戦線、態度が不遜だ

低所得者よレースの時間だ、粉硝子敷き詰め走路に立つ顔みな青白い

運命の人よあちらへ行きたいのですか?お呼びでないわれら悔しい

よかった!保険で解決すぐに出発…さて問題です、ターゲットは誰だったのか

ヒントは銀行員の好きな獣、分かった人から名前消えてく

律儀者の通帳見ました残念、防護服着たバッカス星と遊んでる

猛獣が窪地に潜むが「待ち伏せはずるいよ母さん」並んで帰ろう

中くらいの電気自動車で眠る間もなく発進、見晴らしの良い場所へ

誰とでもともだち皆で稼いだ百万弗で星座を買おう、天文台

"La pensée sauvage"消毒は指先まで悪事は整然と、文明人なり

怖がりなイクラちゃん遠くのスポーツマンだんだん蛇にみえるの怖い

消毒ののち花殻を摘み空へほおる、防衛隊への合図とどけば

とても柔らかな甲状腺の持ち主と契りたいのです放射線技師よ

巨大イソギンチャクに半ば喰われても「自由は死せず」僕の血は美味いか

中央区民で不細工な三人限定婚活ツアー、腹話術師が同席と

檻の中で答え合わせと準備運動の日々、まことわが運命の上出来で

すぐに泣く人で打線を組んだがいいのか桂小金治で?楽しく生きたい

いらない子なのだ汚れたサンダルみたい棄てられ僕は…民主主義の危機

補完計画→置換計画 2020年 改

2020年5月25日:旧友からの誘いでフェイスブック中のチャット欄で皆がフリーな気分で俳句・短歌作品を発表する場に参加。それ以来一日一首の発表を自らの課題として久しぶりの作歌を始める。

同年7月3日:チャット欄開設から1ヶ月が過ぎ、そちらでは過去の作品が物理的に埋もれて(スクロールに手間取り骨折る)しまうためスレッド管理人の作品のみをブログに掲載する。

 

1章 2020年5月25日より5月31日 七首

新型コロナウィルス緊急事態宣言が全国で解除される(5月25日)。新潟県・市はそれ以前5月14日に解除。職場のイオンモール新潟南モール棟も5月13日より時間を短縮して営業再開。呼びかけを受けてから短歌作品を久々に作り始めるが、言葉の配列に戸惑い 短歌もどきにしかならず落胆、試行錯誤続ける日々となる。

デンデンまるで動かぬ船の音のさびし、そよ溜まる空気の重さよ

待っている、こんなはげしく濃く青くゆがんだかたちで吸い込まれたなら

君んちの壁の裏から怪獣出没 、ねえ見せてよつましき陥没

大概なマンボ、噛み合わぬ辻褄、時々は舞台の脇で寝る

誕生花を取り違えぼくは嘘つきお喋りとか、しどろもどろな白昼

好色雑色炉モンジくん食いぶちは自分で稼ぐ日照る日中に

ワニ退治だよこころして来い、でも覚悟はときどき揺らしあたためてね

 

 2章 2020年6月1日より6月30日 三十三首

プロ野球6月19日に開幕、当面は無観客試合。職場は6月13日より以前の開店時間に戻り平常営業へ。6月の給料では契約時間で休業日数分の給料をいただきわりと儲かっちゃう、イオンさんありがとう。村上春樹著「猫を棄てる」刊行(短歌に引用)。誕生日を迎え満65歳に。

しょぼくれてたけど「いいね」「いいね」やだ地団太して人はきたなし

嗅覚バン!発色バン!飛べない鳥が千万と街をはさんで求愛ダンスす

人はみな悔い改めてもその程度、そうだろオマエ黙ってオレの尻をさわるな

きみは空へ声上げ散って、でも人体許可局長ウーン首かしげ却下す

象を追い象に騙され潰されかけて、大人になってく飛べぬままだが

あやしモルグ街2丁目千匹の子ザル跳び出でどの路地からも

恋人が少しはにかみ経皮経肝胆管ドレナージ、痛くないよね怖くないよね

見えづらい陥没や砂、避けがたい領域にいまあり夕餉の時を待っている

水分脂分の持続系たるわたしやあなた、意表を突いて砂地に住まう

見て!あれが禁じられたハンバーグ、聞いて!ずっと止まらぬ警笛ぐゎんぐゎん

友だちになろうよ、ぼくは丈夫さ筋トレに励むしよく森へ行く

<あるみ村長への返歌>
友よ不憫に、賃貸の森さまよえば紆余曲折のぬかりさえぎり

孤独でデリケートなわたくしが唸ったり戸を叩いたり、のっぴきならず

我が内の起伏に住まう制御棒の良し、世界の不穏に対峙出来ねど

君がためいざ繰り出さんミックスグリル、肉々しく頬張りて芳し

かたくり粉横向きのネコ、雲助の好むハチャトゥリアン突飛たじろぎ

歌がわり輝くすべを忘れ悲し、空へ帰るのかあなた許せよ

歌わかれ潤滑で魔法みたいに羽織ったり刺したりの叶わず 許せぬ

さよなら戦うお父さん!風船は空へ猫の子は捨てられず、痛恨

自分神社で祭礼うかれ、首長竜やクジラの風船たなびいている

風船を束ね悲しみ少し宙に浮く、傾くは束の間微風厭いて

<あるみ村長提出題詠>
水辺、秘密のコーヒー錆色の香に持ち重りあり翳に乗じて

きっと何も変わらぬはずの風船爆弾、君ん家を無理に歪ませ

そう、われは「そらの子」なのだ忽然と揮発気化して低空を凪ぐ

もっともっとわたしを信じて造山活動、この身このまま目覚めに怯えて

風心地よき街に噂のコロッケが、どの扉どの窓からも香のかるさよ

きみが誘った世界史講義、瓦礫には瓦礫の理由ありゆくてに花あり

傘持って電車に乗って風と走りだし、いま鉄路歪んで空に近づく

パセリ喰いたし咀嚼音あげたし!孤独な男のたてる音の憂し

夜具につましき香のあり、痛い匂いや死の匂いのこめかみに満つ

オンラインできみら慇懃に和したり愛したり、わたしは心を置いてきている

惑う、思い出の中の歌声はみな眠りの後の男女につらなる

 

3章 7月1日より7月31日 三十六首

新型コロナウィルス感染者、宣言解除後東京の「夜の街」周辺より再び増加。梅雨前線活発化で九州ほか全国で水害発生。新潟市周辺も大雨が続いた。新潟市より介護保険の算定明細書が届き、あまりの高額に驚き慌て、老後の生活に不安を覚える。角川「短歌」8月号購入、水原紫苑を知る。「雀の車」28首に衝撃を受け呼応する作品ができぬかと試作が続く。

アルパカだラクダのようだ楽をしているおまえに侮蔑のキスを贈ろう

おしなべて高きを好む、頭上には鳥の影のみ影の色はしらず

潤いて重く黒く空あり、いずれ滅ぶわれやわれらに雨降らすため

不寛容な季節でないか、ぼくら煮崩れたジャガイモさながら旅の中途で

回り道して熱帯樹を見に、ほら葉陰の魍魎たち柔らかげに揺れ

ミツバチや鳥上空で溶け合い、溶け切れぬ翼きらめく、夏正午ころ

「闇がふたつに分かれてくよ」よく気づいたね彼らねぐらに帰る道なり

ポップコーン空豆ビスケットさあもういちど…今度はわたしが試されている

深夜のジョン万次郎ひとこそ知らね巧みに辞書ひき愛語唱する

メガネしてカマキリみたいで忽然とあり、推し量るに我が試し時か

眠れぬ夜のテレビの時間あじきなく畢竟うるわしき波ハイジャックせよ

魅惑的な素麺じゃないか、いや饂飩だろ不機嫌でいる厨あつくて

よい子にはご褒美を、卑怯な子には絶望と苦いソーダと悔いを上げよう

わが魂腹を押さえて苦しみて浄土荒涼どんどん濡れ溢れおり

勢いが大切、されどあまた無駄吠えに辟易もあり雨しぶく夜など

あの橋は間違いではない、遠き雷遠き雨雲背に家路急く

岡井隆死去の報に接し>
倒れいし幾千の“昨日の友”がうたう歌、男の背より溢れこぼれて

雲を浮力で風は方程式であらわして、ぼくの生きがい測り直すよ

新しき時代に似合う新しき災禍騒然、ただ中で塩飴齧る

なお濃きを求めまた塗り重ねてただおり、くろずみにしか見えず

童子夜を見据える、くらやみのなんという濃さ鉄分過多に口中の酸し

なにがしか穏やかでない、そう誰も辻褄あわせ夕暮れ河をみている

我慢している飼い慣らされてるしなやかではない、されば消えゆくも良し

道に迷う夢をまた見る、荒涼の近さあやうく二度寝できずに

裏庭に兵隊蟻集め我は訓示す、ぞろぞろ行軍つらぬきとおせよ

野菜売る人買う人買い叩く人、叩きたたかうあまたの人臭し

みずすましあめふらし浴室にぬるく音響く、水わたり来しは誰ぞ

大好きなカツサンドついでにジャワティー心のふしぎ笑みて人をそしる

まず虚無を見据え…なーにお前には無理、小粒な闇でも摘み蹴ってろ

歩き過ぐ一人の影がひたすらに美し、サーモグラフは時々冴え澄む

屋上は夜ひとがいなくなる、夜の空ばかり気にするおまえ連れてゆく

逃れえぬ汝が伝える手旗信号「ツギノイタミマツ」そう、待っている

翅をもがれて蜂、行き場なく傾斜滑り落つおまえ余命ってなに?

致死量のとんかつソースで父も祖父も…なのに憎めぬおまえどこに塩分

救いなどないとはいわず「生まれすぐ死ぬ虫もあるのだ」水を撒いている

母たちが集い諍い都市が生まれた、都市は薄き翅に覆われる…母よ

4章 8月1日より31日  三十四首

北陸地方2日梅雨明け、平年より9日遅い。下旬に新潟周辺フェーン現象で猛暑観測。28日安倍総理退陣表明。自身の年金額決定。水原紫苑歌集「びあんか・うたうら【決定版】」購入、前月より「雀の車」本歌取りを試みていたのを当ブログに発表。その後「びあんか」の本歌取りに挑戦中。

人類の柔らかいほうが好き、発端は幾千世代の淡き水よりつらぬく

青銅を刻み削りて光ためおく甕とす、甕より色彩したたれば激し

季節微妙に植物が間違えている、曇る眼鏡で計りおり技師と官吏と

いつとなく風の儀式の最中なり 花摘みの人ら知らぬ間露に閉ざされ

色彩を嫌う人らが集い造られた街、期待はずれな坂道がある

庭掘れば数多の球根あるに驚く多分ここはきみたちの星、許せ

植物の季節よ、芽吹き茎伸び生殖具放つをやまず夏の庭のけわし

わたしだって島を持ってる、間近には捏造列島憤怒燃えてあり

病弱の人から種子をもらった、夕冷えの部屋より出で急ぎ去る

月の輪を持つ獣もっと謙虚に放電をせよ、牙の気配はうれし

毒イモリ毒イボガエル毒を持つ虫に守護されいまは巣ごもる

尖塔に魔性棲みつく、魔には花の色の似合わずに一夜にて蔦枯れよ

さっき見た夢に志村けんがいて、青空のまま熱もつ夜の極まりぬ

<言葉、雫となり流れ去る>神話にはなれぬ誰かに花捧げたし

孤客よまたも裏切られたか?そういって風は喜ぶ胸元たわませ

遠く逃げても母のLINEで炎上必至母も必死ぞ日没近いが

猛き虎バターに変じ、月の色する妖しバターに童心うふと夏めく

わが脳内を胞子爆ぜ飛びそのせいで痛くて笑う、花の懲罰である

「忘れ物取りに行けない、流刑地だから」花ある墓前の記憶だけある

擬態してひとり遅れて夜歩くわたし、死火山であり獣でもある

神のみぞ知る神の脳味噌挽肉ばかりの肉味噌神に捧ぐは禁忌よ

たたら吹き吹きて橙に鋼の溶け滴る瞬時咲く花の灼熱

街中の標に騙し絵あり騙されて雲中行くごと知らぬ顔多し

「きみちょっと枠からはみ出てないか」過ちの消えぬことかくも深き傷よ

紗を纏うをよろこびてあなた、生地透かしやや目を細め白日をみている

大勢の大勢の外れクジまたの名は悪意、ガム噛んであっち向いてる

わたしたちは難き道を選んだ、やや暑き風をこらえて突堤にいこう

「お魚くわえた」あの人をサンダル姿で追えばdestinyころり寝返る

長い夜、やや苛立ちて眠れずにあの頃を汚すほかなし優しくないなあ

澄みて冷たく湧き出ずる水の発止よ、誰かの古傷さいなんでいる

急げ少女よ悪い仲間みな放心のこんな夜明けに旅立つはよし

あの人の失態知りて戸惑い夕食の献立決まらず、うそ笑いする

起爆剤が見当たらず愕然と夏の午後、もう熱でみな溶けてくれたら

太刀持ちは炎鵬役者絵白浪の裸身しずかに迫り出して夏

 

5章 9月1日より30日 三十四首

菅義偉内閣発足。ジャイアンツ早々とマジック点灯、大リーグダルビッシュ最多勝。職場フードコートでは各テーブルにアクリル板設置。社員が勤務予定表を今月より作る。職場のあちこちで不協和音。髪の毛がそうとう薄くなる、格安床屋の回数券を使いきれず悔しい思い。


旅好きの風にさらされわが魂乾き軽めきもうヒマラヤまぢかよ

蝉喰い男の出没で子どもら虫捕り叶わず空蝉を持ち鬼となる

わたしはきちんと縊れたのか、視界狭くいま花しか見えぬよろこび

「かつてわたしは殺し屋だった」息つぎの間に独語し古刹あとにす

もうわたしたちは謎だらけ地平まで花咲かそうと千年倦まずに

水溜める甕に雌雄あり、水の熱奪い霧たちのぼるは手弱女

位置エネルギーひとを傷つけ咎められ「おまえ」は似ている水の孤独に

カルダモン或る夜のきみは嘘つきで「死神みえる」とのろく燻れり

逃げるならまだ船を降りてはならず、さて急流はひとを抜き去り嗤うと

虹は池よりすっく立ち昇りされど水面のひそか恥じらいおるか

植物のような人植物のように死にたし転移する木の瘤あたらし

いじわるないもうと、花火もアイスも放り捨て介護に夢中笑みており

twitterでかね配る人たぶんより強くひと汚す喜び風つよし

頭部食いやぶりエイリアン出でしを傍らの人の手握り息止め観たり

病歴を気にする上司、鳥になって誘惑をして刃立ててきみ囚えたき

王子の好きなアボカドを木の葉に盛り皆で喰らう、謀議やぶれて

雲に乗ってインド上陸、緻密だが効率悪きインド上空停滞をする

恋人もないのに…恋の唄あり敵味方あり乾かずにいるわれおり

火の赤く夕陽は茜よ血も紅し唇朱なれば腿ぞ緋けれ

誰も彼も水に流されればいい流れ冷え凍つき荒野にわれひとりよ

烏賊の目をえぐり嘴もぎ皮剥ぎてとりあえず笑む、地獄絵図に似たり

天気予報は爛漫の花よされど月光の金、とてもつめたく花を殺すと

忍者のまねして月夜を跳び駆ける爽快、転地療法だよいま外にいる

傘もささず闇夜に説法、主よとりあえずお供えいかが?呑みね喰いねえ

「絶望」温泉行きのバス彼岸は予約で埋まる、死者の律儀よ

Quo Vadis,Domine?わたしに君に限界がありピクニック日和にこやか

その丘のさらなる先にガリバーの山の連なる、花木植うべし

独身者、青年のおおあくび何もせず老いる算段路地を見ている

谺せよボーイソプラノ、不犯にて逝きし人らの声そらすべく

「恋人は偏西風に乗りやってくる」もうじきなのに眠い真昼間

ぶるぶる震えるぬいぐるみで救われたいな邪なあいつに投擲すべし

天上の人に打たれた、贅肉ふるえた、楽をして生きるべからずと

戦だもの敗けられぬよと猿蟹の急遽出揃い金具がしゃりとさす

わたしたちの洗濯機が故障し海渡れない!追われ雨宿りして<なう>

 

6章 10月1日より31日 三十八首

トランプさん新型コロナに罹患、でもすぐ寛解で怖い病気でないことを身をもって証明。菅総理学術会議推薦6名を拒否。ノーベル平和賞に国連食糧計画。職場イオンでは売上昨対100%超え、コロナ自粛も収束へ。職場新人巡回女性(病歴あり)に故無く嫌悪される、怖さと困惑で上司に作業時間の変更を願い出る(11月から変更に)。またフードコート新人20歳中国人女性がナルコレプシーの持病持ち。いろいろ精神世界の不可思議を思う。

妻なきまま死んでられないコロナで…と小声走ったぼくの球根

苦しみの純化。ぼくらもう年長組だし日々の嘆きのまこと小市民

未来が少し見えちゃう病気の子がかわいそう、弟がいつも睨む

母さんの誕生日に贈ろう「ぼくは自分を汚して生きる」除湿機を

PIZZCATO弾みはじめる保温タイム、ときどき黒焦げ朝にかなしむ

吹けよ風、火災保険の特約を控えめに小さく歌う人なぎ倒される

父は元特攻隊員で五体全う復員し警官拝命、墓の裏から蜥蜴よく出る

風の音と聞き間違えちゃうきみの声、もうくれないも闇かもしれない

蕎麦屋ではドラゴンの肉、鮨屋にはウミガメの肉、淑女堪能す

明日になれば怪物となるぼくの心臓、引く手あまたなわりに不出来で

まもなく湾岸地下駅に電車が入線します、バスタブ型の車両なお良し

水棲の人橋桁を高い場所から叩きだす、悪い遊びを覚えたらしい

猫に小判童女には業平さまでも荷が重く開き直りて輪投げしてみる

GoTo業平、むかしの春に帰りたくレトロな電車でカモメみにゆく

メアリーきみの仔羊が葡萄畑で途方に暮れてる、なみなみと涙ため

走れくますけ!母がひとりで待っている家への階段互い違いに

わがままなあの人を何度も叩いて水に落とした、白濁しぶきて

穏やかなだけでは駄目、汚れてもいい服を着て宙にあそべる

夜の国に転げ落ちきていざ国境は黒光る河、渡るよりなし

放課後はきみとの時間、じゃんけんをし鬼を決めよう滅び待つ順を

渦から出来たわたしたちだけど起きて抱き合い、もう渦に戻らず

珍獣といっしょ夜の山歩きたし、闇でこそおまえをすんなり愛せる

軍艦が沈んでる海、素潜りで危なげなけれど“無念・苦しい”が耳鳴る

<花に嵐>の譬えあり お前の放つ擲弾筒が詩歌ゆさぶり花はなきがら

ハニカミ文法モジモジ会話術、届かぬかわたしの歌がと面伏せて問う

「デートにいこう星を見に」山上はきっと楽しい垂訓もあるきみはさいわい

ひ弱な子なのにボッチャの達人、戦いのあとぐったりは父母なのだけど

石投げて塔を倒し塔なき街と名付けた、少ない画材で街が描ける

あたたかい国に死者甦る、死者たち昼は諍い夜に相和し詩を奏でおり

花を摘めば商売になる遊びに行ける、遊んでばかりのクマよ手伝え

小さな嘘がばれちゃいまして手立てなく海見にゆくか青はたっとし

もし踏切が締まっていてもおまえのために走りたい、遊歩道でこぐま真顔に

人類の半数はIQふた桁、みなただの野次馬みたい顔が闇に消える

困った、緑が病気だあらぬこと言いいびつに屈み…嫗の病よ

ひとりの夜は繭にこもり昨日みかえし…そうかやはり廃坑ここは

青葉台若葉荘、階段わきに緑の洗濯機あり全部の大人が洗われる

夢の中で踊り疲れて、なのに夢の中ひとりのわたし踊り止まらぬ

わたし宛に歌が届いた、叱責の強き口調で「踊れ!恋せよ!」と

 

7章 11月1日より30日 三十四首

トランプさん大統領選落選。世界中でコロナ第三派猛威、欧州で都市封鎖など。国内でも感染者数増加、新潟県でも警察署や小学校でクラスター発生。ワクチンの開発が大詰め段階のようだがどうなることか。職場の同世代責任者男性、肺癌が見つかり急な退職。自治会活動で近隣の歩道緑地帯の整備を発議、ボランティア募集し草刈りなど始める。月半ばで日々の歌作の陳腐化に気付き試行錯誤しはじめる「記憶失っていい…」以降言葉使いに変化→でもあっという間に元に戻った。

かあさんへ蚕が元気だ、虫愛ずるあなた溜息つつましく市況気になる

コーヒーが切れ夜を歩き満月を見る、月光に肌澄み夜着のかるさよ

紅茶オーダーしましたわたし意地悪な姫です、誰彼となく議論吹っ掛け

全て鳥の名を失念、でもわたしこそ鳥よたじろがず天空奥底の青知る

迷い猫預かっています、運命を溌剌ゆさぶる真直ぐなけものを

ひとりで出来るもん死の準備!誰も気づかぬ道みつけ少し抗う

わが心のありどころとても柔らか開かれてみなを好いて、きっと短命

スカンク世界はこんなに臭くて疎まし、トランプそうだおまえも

傍らに人いたはずいやいま透けきえた、呼び名を知らぬ魂だったか

鮎の塩焼き、世界はずるく出来ていて急流逃れまた美酒を飲む

「人が勝手に死んでゆく」ぼくの日常ほどよき緊張かたわらに滝あり

記憶失っていい、喋れなくていい、呼び名知らぬ島が霧に隠れた

脱衣するあなたうれしくてあおむけになりたい脱衣したまま

<もう少し待つ、目を瞑っていればいい>忘れかけていた音ききたくて

95歳になったなら捨ててくれないかこの身を、強風で景色が変る

口笛吹いてうれしくはない自転車療法、ひとを容れずにいまだ

話し方は見よう見まね知らぬ誰かに調子合わせ、チャーリー悲しむ

恥ずべきはおまえ爺さん、追い抜かれ逃げ遅れでも種子蒔くべきか

もっともっと楽になりたい夢のようなわたしの時間に押し戻されたい

ヤバい人いづこにも出没、ヤバい人らと通じ合えぬかひとりめし食う

同じわたくしだけどいくつもの命が溶け砕けそのたびの修羅を遊ぶの

わたしといて楽しいだろうか?川を見て文字盤を見て人の息吹よ

嫌われて追い払われる夢を見て…遍路さなかにぼく空威張りする

どうにも解けぬ問いあり黄金・不死・父母…椋鳥の大家族が鳴く

曲がるんだまがれ人生曲がれ、おまえさん深刻だよと言わせぬ曲折

孤独特盛り溢れかけ死の淵迫るよ、ズボン下ずり落ち荒涼である

おでん売るならおでんの心もぎ取りてお前に供し、お前の心は許さず

コンバイン有能、みどりどんどん加速してぼくの文化が野辺に蔓延る

嘘つきの子が路地に隠れた、電光で照らし懲らしめ日和うるわし

つまらない都市、金属がすぐ腐食する赤錆び色の出来損ないな花たち

船で文化が運ばれました、異邦の香に恍惚のきみ海揺れておる

卑下するなかれブドウ球菌、腹をさすられ嬉しかったり腹立ちだったり

同調圧力いうほどのことでない、交尾の順待ち並ぶぼくらのよろこび

次の波を見張り続けてこれからも、さなくばひとり仔猫の自慢す

 

8章 12月1日より31日 三十五首

英米ではコロナワクチン接種開始、でも英国では新種コロナウィルス感染力が強く疫病との戦いはまだ続く。日本でも第三派襲来で医師会が「医療崩壊寸前」を叫び「勝負の三週間」を呼びかける。海幕長が送別会で元IT担当大臣がパーティでコロナ罹患、あっけなく罹るよう。NP作業者のシフト表作成をいろいろ疲れて放棄、他のNP作業関連からも手を引く。自治会ボランティア緑地帯修復作業始まり、整地した一角にパンジーを植え意気軒昂。水原紫苑歌集「えぴすとれー」購入。「肛門が天文學をまなびけるアリストファネスの知らざりし菊」などぶっ飛んだ作品多くとても嬉しい。

テーブルマナーが気になりすぎてあの人を殺したく候、爪を見ている

アルバムを捨てられず母の逡巡、でもぼくいい子でいるよ慾薄くして

ぼくの黄揚羽黄金虫だれかが盗った真冬に気付いた、少年期凍てつく

匂いが違う人に出会った、花や皮膚が死ぬ匂いさす会議の前に

蛹だった、真太くはない木に沿える少年消えてく人に知られず

田舎カクタス瓜二つでも違ってみせて、ねえ魔術師って本当にいるの?

シュルシュルお金が溶けてく眼の前で、それみたことかめでたき音である

山頭火が処刑されたよ、咎めたせいであいつを」山茶花も散り

みどり、金属と和み包み軋み増殖している慎み知らずみどりは

貴種流離、新型コロナで誰も彼も詰らなく生きあるいは色めく

王蟲腐海→集団感染ぼくら変人ぶってる恋の魔術師ルネッサンス爛熟す

ジョンレノンという名のネコ、我を忘れ皿を舐めてる呵責なく生きねば

健康体なり酒毒遠ざけ血中の勇士笑顔で…助けて!希望がどこにもないの

お婆さん川で洗濯、気が変になりそうさかしまを生きるしかない多難に

この道をたましいも通う、変人ぶりて永劫回帰を問うや初雪

もっと容赦なく懲らしてくれないかわたしを!冬の風はしたたか

オオカマキリに教えてあげたい、汝が母どもも満月に反り威嚇していた

シクラメンの赤が濃すぎてホームセンター園芸コーナー逡巡している

君とはもう逢えないのだろう、傷つきて水辺にちかく苔のまみどり

恋人同士のケンタウルス「ぶっ壊す主体的に」と振られたばかりのケンタウルス

騎馬戦の騎馬すってんころり大将の恥辱だくだくシャツの土色

海を見ずに死ぬのか君は?嫌です主任!水は静かに縊れて溜まる

とりあえず引き返そうよ棟梁のせいじゃないんだ、雲に届かぬのは

遊び通せというたかジョン・レノン?苦い薬を服めば勝手に進む船

前世は恐竜だったよ、一億年鉱物でしたいまはヤドリギ恋は拒まぬ

cock-a-doodle-doo、子らのこともう忘れ棲み心地ばかり気にする健気よ

母と暢気に歌仙巻いてる、でも時に母の獰猛リミット越えて花を散らかす

ごらんわたしのあそこは完璧でない、奥底きれ込みありし桜の色の

母さんぼくはこうして死んだ、ビル街のパン屋で買い物してる間の雹

おでんのブルース聞きながら寒気予測す、元日のガスステーション休業だったか

ひとりでに閉る扉ガタピシ証言台へ、わたしは過去を愛せるだろうか

娼婦うきうき「この名は風から奪った」続き知りたく冬の花屋へ

約束の場所で噴出汚泥温泉これじゃきみに逢えない、蝉の一生

デカルトに告白されたの」姫の逡巡この街はどこへ行っても石鹸臭くて

木登り公園木登りをする猿たちが雪の望郷、眠たくなったら敗け

ピットイン

石丸公竹斎のブログ「こころの声」エントリで短歌関連。

「こころの声」2019年6月23日エントリ「『もう少し我慢をすれば…』めどはたつかな?」

kokoronokoe.hatenablog.jp

「こころの声」2019年6月26日エントリ「21世紀の短歌って、モダン言葉遊びじゃないのか?」

kokoronokoe.hatenablog.jp

「こころの声」2020年1月29日エントリ「佐々木定綱歌集 月を食う」

kokoronokoe.hatenablog.jp

「こころの声」2020年7月12日エントリ「岡井隆死去」

kokoronokoe.hatenablog.jp

「こころの声」2020年7月15日エントリ「作品を誉めてはいないのね」

kokoronokoe.hatenablog.jp

「こころの声」2022年1月2日エントリ「『置換計画』ブログ、不要なスレッドを削除する」

kokoronokoe.hatenablog.jp